観劇すること幾星霜。

ジル・リチャンヌが観劇の話をするぶろぐ。

邦画【ゆれる】2016.10.14テレビ大阪

西川美和監督作品「ゆれる」(2006年)

 

たまたまテレビ大阪が夜中に放映してたのを付けてたら目が離せなくなり完走…

 

あらすじ

ストーリーは主人公である猛とその兄・稔が母親の葬式で再開するところから始まります。
猛は東京で写真家の仕事をしながら気ままに暮らし、反対に稔は上京することなく実家のガソリンスタンドを継ぎ父の世話や田舎の古く冷たい慣習に雁字搦めになりながらも現状を受け入れ生きる日々。


そんな中猛は久しぶりに実家に帰りどこかぎこちない兄や閉鎖的な田舎の空気を味わいながらも変わりなく過ごしていました。
ところが、話は猛と稔そして猛の元恋人であり稔の想い人である智恵子の3人が渓谷に遊びに行く所から一変します。


猛が草花の写真を撮っていると叫び声が聞こえ、稔と智恵子が吊り橋の上で揉めているのを見ます。次の瞬間、智恵子は吊り橋から転落し川に流され死亡。
そこから兄弟はこの事件をどうするか葛藤し、稔は「智恵子を殺したのは自分だ。」と自首。裁判にかけられます。猛は必死に兄を助けようとするものの、この事件が吊り橋のシーンだけに起因するものではなくずっと押し込められてきた兄弟同士のヒエラルキーや田舎に縛られる業の闇が絡み合っているものだと少しずつ気づくようになり…

最後の方は…見てください!笑

 

 

感想とか考察とか

奪う方の奪う罪悪感、

奪われる側の「自分は被害者である」という安心感。

吊り橋の上の事件がある前と後では兄弟間の生きやすさが逆転してたよつな印象を強く受けた。

 

この一連の事件を通して、お兄ちゃんはこれで良かったって思ってるんだろう。

幼馴染を殺してしまったことにたいする罪の意識と、どうしようもなく単調な人生に分岐点が現れたというワクワクが無意識のうちに共存してるように見えた。

お兄ちゃんはやっぱり優しい人で、だからこそ故郷を憎む気持ちに折り合いがつけれていなかった。だからこの殺人、投獄はお兄ちゃんの"ここからでたい、冷たく閉鎖的な田舎で人生を終えたくない"という願いを叶えるためのぴったり装置として機能したのではないだろうか。
だからこそ最後のバス停でのお兄ちゃんの笑顔がある。

田舎で人生を終えるということは、自分の可能性を殺すということ。生きているのにじわじわ自殺しているようなものじゃないかな。
弟はそれに気づいていて、自分が東京に出ることで兄にそれを押し付けているかもしれない『兄の人生を奪ってしまっている可能性』の罪悪感に恐怖しそれを否定したいという思いから兄を無罪にしようと奔走していたように私は感じた。

狭い田舎で前科者なんて、居られなくなるのはきっとお兄ちゃんも弟も分かってるはずだもんね。だからお兄ちゃんが罪を自ら受け入れること=田舎から出たがってる・出るきっかけを欲してるということになるんじゃないかな。途中から弟が兄を救わず投獄することにしたらへんは寝ぼけてたからもっかい見て考えたい…。

 

結局さ、お兄ちゃんは智恵子のこと殺してよかったんだよ。自分が田舎に残らなきゃいけない理由のひとつでもあったし。
というか、『残らなきゃと思い込むため装置のひとつ』だったんじゃない?
それと同時に君のために残ってあげてるんだという気持ちがあったから、彼女の拒絶を拒絶したんじゃないかなあ。
だから、君のために田舎に残った自分よりも東京で好き勝手してる弟を選んだ彼女を許せなかった。

 

結末を知った上で冒頭シーンを再度見ると、なんとも新しい考察というか想像ができて楽しいね。
葬式のシーンとか一触即発の父と弟の仲を取り持とうとしたり、稔の平和主義かつ事勿れ主義的な性格が垣間見え流と思っていたけどもしかしたらお兄ちゃんは『実家に残る長男』の役割演技に徹してただけじゃないの?役割演技を全うすることで正しいと信じきれてない自分の今の人生を肯定しようとしていたんじゃないの?とかね。

 

物語は本当にお兄ちゃんが智恵子を殺したのか、あの時吊り橋の上では何が起こっていたのかを主題に進んでいくけどほんとはそんな事どうでもよくって、その状況を作り出した環境と兄弟2人の生き方がテーマなんじゃないかなと思いました。

 

すごく面白かった。
田舎ヘイト系の日本の作品ってやっぱりいいよね…おらこんな村いやだ〜東京に出るだ〜!

 

余談だけどわたしはこの田舎暮らしで人生を諦めざるをえなかった人間の狂気系の話なら劇団鹿殺しがピカイチだと思う!!

兄弟間の嫉妬もだしさ、丸尾丸一郎さんの描く閉鎖的な田舎と田舎を受け入れたと思い込みたくてもコンプレックスと諦められない気持ちがグツグツ煮えてる人達の物語が大好き。田舎が息苦しくて、生まれ順や場所のせいで自分の人生を諦めなきゃいけなかったマグマみたいな感情を抑えながら穏やかなフリしてるの、はーむりみ。

劇団鹿殺しにはこういうのまたやってほしいな…ベルゼブブ兄弟とか山犬とか彼女の起源みたいなやつ。

 

なんにせよ、生まれた土地と家族は選べないから。重く苦しいものを受け入れるか拒絶するか人それぞれだしそのそれぞれに大きなドラマのあるテーマだと思う。私は好きです。