幾星霜

わたしのため、書き置き

わたしの宝物、小さな命へ

忘れたくない。

 

私がカリカリを手に取り口元へ差し出すと、

両手で私の手のひらを引き寄せ顔をうずめて食べ出す。

そのとき、親指と人差し指の先に触れる柔らかい毛。

私と彼女が握手をしているような感覚、爪の生えた指の奥にある柔らかい楕円。

忘れたくない。

 

必死に食べながら、歯が私の手を傷つけないように注意を払う彼女の心遣い。

ふりふりと手のひらに触れる透明で長い髭の束。

美しくてあたたかい。

 

たまに触れる舌が熱い。微かに感じる鼻息があたたかい。

生きてる。

 

毎日朝夕に行う幸せな食事の時間。

彼女のことが愛おしい。

 

つむぎ、あなたを一生大切に育てるから、

ずっと幸せに暮らそうね。